※ネタバレを含みますのでご注意ください。
アカデミー賞作品賞に輝いた映画『グラディエーター』(2000)の待望の続編『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』(Gladiator Ⅱ)
期待通りの素晴らしい作品でしたね!
前作が綺麗に終わっていたため、続編の脚本は難しかったと思います。
『グラディエーター2』は『1』の16年後の物語で、『1』よりも複雑な人間関係になっているため、特に最初のうちは混乱してしまうかもしれません。
映画を見ていて気になったのは、新しいローマ皇帝のゲタとカラカラの二人です。
なぜこんな冷酷で無能な人間が皇帝になって好き放題やっているのか疑問に思いました。
同じように感じた方も多いのではないでしょうか。
なぜゲタとカラカラがローマ皇帝になれたのでしょうか。
そもそも映画『グラディエーター』『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』は史実を参考にしてはいますがフィクションであり、史実と異なる点がたくさんあります。
ゲタとカラカラの共同皇帝は実在しましたが、史実ではカラカラが兄でゲタが弟ですが、映画では逆でゲタが兄でカラカラが弟となっています。
さらに映画では二人は双子ということになっています。
映画には、狼の乳を吸うロムルスとレムスの像が登場しており(ロムルスとレムスは、ローマの建国神話に登場する双子の兄弟で、ローマの建設者)、ゲタとカラカラを連想させるシーンがありましたが、ロムルスとレムスとゲタとカラカラはもちろん何の関係もありません。
動物に育てられたかのようなゲタとカラカラを狼に育てられた双子のロムルスとレムスになぞらえたかったのだと思います。
知らない人が見たらゲタとカラカラの像かと思ってしまいますよね。
監督のリドリー・スコットは、同じく2024年公開の映画『エイリアン:ロムルス』で製作総指揮を務めていますが、タイトルと宇宙ステーションの名前としてロムルスとレムスが登場しており、『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』ともリドリー・スコットの頭の中で繋がっていることを感じます。
二人がなぜ皇帝になったのか。
前作『グラディエーター』でコモドゥス帝が死に、ローマ帝国は平和になったのだと思っていました。
しかし、コモドゥスが死んだことによりコモドゥスの姉ルッシラの息子ルシアスは権力闘争に巻き込まれて命を狙われたためヌミディアに亡命します。
映画の中ではコモドゥス帝が死んでからのローマの変遷については詳しい言及がなかったと思います。
史実では、ローマ皇帝は第16代アウレリウス帝→第17代コモドゥス帝→第18代ペルティナクス帝→第19代ユリアヌス帝→第20代セウェルス帝→第21代カラカラ帝、ゲタ帝の順に皇帝になっています。
コモドゥス帝の死後のごたごたの中で、ペルティナクス帝は3か月、ユリアヌス帝は2か月で暗殺され、
アウレリウス帝とコモドゥス帝の親子2代に仕えていたセプティミウス・セウェルスが第20代ローマ皇帝となります。
そしてセウェルス帝の死後、遺言により息子であるカラカラとゲタが皇帝に即位します。
『グラディエーター2』は『1』の16年後の物語ということで、史実でカラカラとゲタがローマ皇帝になった時期と大体同じです。
二人はただ皇帝の息子だったため共同皇帝になれたのですね。
カラカラはローマ史上最悪の皇帝と言われていますし、映画のキャラクターとしても相応しいと考えられたのではないでしょうか。
史実では兄のカラカラが弟のゲタを暗殺しており、映画では弟のカラカラが兄のゲタを殺すことになりましたね。
なぜ兄と弟を入れ替えたのでしょうね。
映画『グラディエーター』と『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』は、史実を基にしてはいますが、多くの創造と脚色によって素晴らしい作品になっています。
史実との違いを見ていくのも面白いですね。