※ネタバレを含みますのでご注意ください。
様々な物議を醸し、社会現象を巻き起こした大ヒット映画『ジョーカー』(2019)には、何度も見たり、スローで見ないと気づかないような細かいネタや設定、演出がちりばめられています。
主人公アーサー・フレックが右手と左手を使い分けていることや、映画のシーンにさりげなく映る数字が映画が進むにつれてカウントダウンしていっていることなど、知っているとより映画が面白くなるようなネタを紹介します。
アーサーは右利きでジョーカーは左利き?
アーサー・フレックは右手を使っているシーンと左手を使っているシーンが明らかに意図を持って分けられていると感じます。
コメディショーでメモを取っているときには右手で字を書いていますが、皮肉なジョークをノートに書き留めるときには左手で字を書いています。
両利きの方は分かりませんが、普通、字を書く手は左右どちらか一方しか使わないでしょう。
二重人格のように感じますが、左手で書いているときは字が下手なので、利き手は右手のまま変わっていないと考えられます。
ちなみにアーサーを演じたホアキン・フェニックスは右利きだそうです。
トーマス・ウェインの息子ブルースに手品を見せるのも右手です。
分かりやすいのはタバコを吸うシーンと拳銃を撃つシーンです。
テレビを見ているときのような日常のシーンや母親を心配しているシーンでは右手でタバコを吸っていますが、母親を手にかける前やマレーのトークショー出演前にモニターでマレーを見ているシーンでは左手でタバコを吸っています。
そして拳銃はすべて左手で撃っています。
つまり、心がアーサー側にあるとき、冷静なときは右手、ジョーカー側に傾いているとき、感情的になっているときは左手を使っているのです。
ピエロのメイクをするシーンやジョーカーのメイクをするシーンなど、アーサーが鏡に写るシーンでは、鏡で左右が反転することを効果的に利用して象徴的に演出されています。
右手左手というより、正確には右側と左側でアーサー側とジョーカー側が分けられているようです。
同じアパートに住む女性ソフィーに対して、手で銃の形を作って自分の頭を撃つ真似をするシーンでは、映画の序盤のシーンでは、左手で頭の左側を撃つ真似をしていますが、映画の後半、自分が精神障害で妄想していたことを悟ったシーンでは、右手で頭の右側を撃つ真似をしています。
さらにジョーカー側であることを示すように顔の右側がアップになり強調されます。
これはマレーを撃つシーンも同様です。
頭の左側を撃つ真似はジョーカー側の負の感情を殺したことを示し、頭の右側を撃つ真似はアーサー側の理性を殺したことを示しています。
その後、アーサーは自分の母親を殺しました。
最初のメイクのシーンで泣くときは右目から涙が、デモが起きたときの地下鉄でのシーンやトークショーでマレーを撃ち殺したときは左目から涙を流しています。
また、映画ラストでは、ジョーカーが捕まり乗せられたパトカーの右側にトラックが突っ込み、左側の窓からジョーカーが引き出されます。
これは、アーサーからジョーカーに変わったこと、ジョーカーが誕生したことを示しています。
これらの右側がアーサー、左側がジョーカーを表していることについては正式には公表されてはいないようですが、明らかに意図して決められていたことだと思われます。
この演出は、続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(2024)でも引き継がれていました。
というより、より明確に区別されているように思います。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』では、アーサーは二重人格であるかどうかが焦点となっており、それを象徴しているのが右側と左側の表現だからです。
1作目の『ジョーカー』と同じように、アーサー側のときは右手で、ジョーカー側のときは左手でタバコを吸っています。
そして、レディー・ガガ演じるリーは左利きです。
最初にアーサーと出会ったときには、右手で頭を撃つ真似をアーサーに対してしています。
これはアーサーを殺してジョーカーになれというメッセージです。
ぜひ『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でも、右手と左手、右側と左側の演出に注目してみてください。
カウントダウンしていく数字の意味は?
『ジョーカー』では背景に数字が映っているシーンがあり、その数字が物語が進むにつれてカウントダウンしています。
- アーサーが、ウェイン証券に務めるエリート社員の3人目を殺した駅のホームが9番ホーム。
- アーサーと同じアパートに住む女性ソフィーの部屋の番号が8B。
- アーカム州立病院で母親のカルテを奪った階が7階。
- アーサーが刑事から逃げて電車に乗り込んだホームが6番ホーム。
- 逃げ込んだ電車の中を歩いて5車両目を通過。
- マレーのトークショーに出演する際にアーサーが利用した控え室のある階が4階。
- トークショーの生放送中にアーサーを撮していたカメラが3番カメラ。
- アーサーがマレーを撃ち殺した後、放送が切り替わり、映ったニュース番組に2の数字。
- 最後に、パトカーから引き出されたアーサーが車の上に立ち上がるシーンの背景の看板に「ACE(1) IN THE HOLE」の文字。
これはアーサーがジョーカーになるカウントダウンだと考察されています。
また別の考察として、日本のトランプゲーム「大富豪」における数字を表しているという説もありました。
海外では「President」と呼ばれるゲームで、日本の「大富豪」を元に作られたそうです。
通常、最も強いカードは2で最も弱いカードは3なのですが、革命時には強さが逆転し、2が最も弱いカードになり3が最も強いカードになります(ジョーカーがある場合、常にジョーカーが最強のカード)。
アーサーがエリートサラリーマンを撃ち殺したことで革命が始まり、数字の強さが逆転していく様子を表している、アーサーが強いカードになっていくことを表しているという考察です。
そして最後に映される「ACE IN THE HOLE」は”最後の切り札“という意味で、”ジョーカー“を表しているというわけです。
数字の2が表示されたすぐ後には、それまでゴッサム・シティで一番の”大富豪“であるトーマス・ウェインが殺されています。
これは一番強いカードだった2が、革命により強さが逆転し一番弱いカードになったことを示していると考察されています。
トランプのジョーカーやゴッサム・シティの格差社会ともリンクしている面白い考察です。
こちらのカウントダウンする数字についても公式の発表はありません。
まとめ
ぜひ、アーサーの右側と左側、カウントダウンする数字に注目して、映画『ジョーカー』を観てみてください。
また、映画『ジョーカー』には他にも様々なオマージュやトリビアがあります。
こちらの記事に詳しく書かれていましたのでぜひ読んでみてください。