※ネタバレを含みますのでご注意ください。
2025年5月16日に日本公開された映画『サブスタンス』(原題:The Substance)。
ホラー映画やSF映画が好きで、情報が公開されてからとても楽しみにしていた映画です。
第97回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の5部門にノミネートし、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞、第77回カンヌ国際映画祭ではワールドプレミアで約10分間(9分、11分、13分と異なる報告があります)に及ぶスタンディングオベーションを受けて脚本賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しました。
ただ、賛否両論あり、確かに好みの分かれる作品だと思います。
個人的には、ホラーやグロい内容の映画に慣れている私も、なかなか衝撃的で予想外の展開に満足できる作品でした。
デミ・ムーアの演技は素晴らしかったですし(特におばあちゃん時の表情や動作)、ちょっと笑えるコメディ要素もあって完成度の高い作品だと思います。
女性の容姿が社会からどう見られ、女性がどう扱われているのか、それによって女性がどれだけ苦悩しているのか、コラリー・ファルジャ監督が伝えたい内容や風刺はしっかりと伝わります。
一方、薬の効果や分身の設定にはやや甘さがあると思いました。
本体の背中から分身が出てきたところは、本体は空っぽなんじゃ?と思ってしまいました。
同一人物であるはずのエリザベスとスーは、なぜどちらか一方しか存在できないはずなのに二人同時に存在することになってしまったのか。
薬を提供している者は、本体も分身もあなた自身で一つだと言っており、それは間違いないと思います。
一見、お互いの記憶を共有していないように感じてしまいますが、入れ替わった瞬間に本体または分身の記憶が入ってくるためそう見えるのだと思います。
そのため、もう一人も自分自身であると思えなくなり、おそらく人格が分裂してしまったのだと考えられます。
そして物理的には、分身に終わらせる薬「terminate」を打ちますが、蘇生と同時に入れ替えを行ったことで想定外のことが起こり、中身は半分ずつで二人が同時に目覚めた状態になってしまいました。
このとき二人の人格はそれぞれのものになっていました。
欲望をコントロールし、自分のことを大切にできていればこんなことにはならなかったのに。
欲望をコントロールし、自分自身を大切にすること、そして、ありのままの自分を受け入れることが、この映画から学べる一番重要なことだと思いました。
エリザベスとスーが同時に存在してしまうシーンは、最近公開されたポン・ジュノ監督の『ミッキー17』と同じような展開になり、SF映画の流行りの設定かと思いましたね。
殺害シーンやグロシーンは最近ハマっていた『テリファー』味があってぶっ飛んでいておもしろかったです。
そして、モンスターになって知能が下がっても、美しくありたい、認められたいという本能なのか、執着なのか、呪いなのか、ジュエリーを身に着けたりしているところの可愛さと哀れさがなんともいえません。
ただ、最後のクライマックスシーンだけが映画の中で浮いていて、ちょっと粗さを感じました。
わざとの演出でしょうし、そのギャップがおもしろいところでもありますが、統一感がなかったかなと。
笑いよりも恐怖を重視したほうがよかったのではと思いました。
ここは一番好みが分かれるところでしょうね。
監督によると、この映画は最終的には束縛からの解放を描いているとのことです。
最後はバイクに轢かれるんじゃないかとヒヤヒヤしました(笑)
“サブスタンス”(Substance)は、物質、実体、本体、本質、実質、内容などを意味する単語で、映画に登場する薬のように化学物質や生物学的物質を指すほか、抽象的な意味として本質や核心のことを指し、まさにこの映画を一言で表すタイトルに相応しい言葉ですね。
「Substance」使用方法
- 「アクティベーター」1回の注射でDNAのロックが解除されます。
本製品による有効化は一度だけです。
「アクティベーター」使用後はバイアルを廃棄してください。
「母体」は昏睡状態になりますので、忘れずに点滴による栄養補給を施してください。 - 必ず、7日ごとに「母体」と切り替えてください。例外はありません。
- 「安定化剤」は決められた量を服用してください。
- 自分をコントロールしてください。「母体」も「分身」もあなた自身であり1つであることを忘れないでください。
- 服用したものは元に戻すことはできません。
「アクティベーター」の使用後、バイアルを廃棄しろと書いてありますが、余る量入っているのも悪いですね。
『サブスタンス』の原点といえる、コラリー・ファルジャ監督の短編映画『Reality+』(2014)もぜひ観てみてください!